一時預かり施設の感染症対策はどうしているの?
2024.12.15
一時預かり施設の感染症対策はどうしているの?
こんにちは一時預かり・託児所開業サポートの油谷です。
今回は『一時預かり施設の感染症対策はどうしているの?』についてお答えしていきます。
幼い子どもたちの健康状態を守るための感染症対策、大切ですよね。
まず、一時預かり施設は他の保育施設と比べて、「不衛生」なイメージをお持ちの保護者さまが多いことを認識する必要があるかと思います。
なぜなら、一般の保育園では毎日決まったお子様と保護者様が出入りしますが、一時預かりでは毎日「異なる」お子様、保護者様が出入りします。
また、0〜3歳のお子様が多いので、病気をもらいやすく、看病が大変、そして幼い我が子になるべく病気にかからせたくないと感じている保護者様の気持ちは十分理解できますよね?
私は感染症対策に特に力を入れています。
自分自身が子どもを預けて、病気になり預けたことを後悔するようになってほしくないからです。
こういった保護者様に気持ちは理解した上で対策できると流行中の感染症にも対応できて、お客様が激減なんてことも避けられますよ。
①集団感染のリスクが高い
集団で生活しており、午睡や食事の時間を含め、子ども同士が濃厚接触する機会が多い保育施設。そのため集団感染のリスクが高くなっています。そこで、しっかりと感染症対策を行うことが重要視され、集団感染のリスクの軽減と健康的な生活の確保が求められます。
②病気に対する免疫がなく重症化しやすい
幼い子どもは、病気への免疫がありません。万が一、そのような子が感染症にかかったらどうでしょうか。大人は平気でも、免疫のない子どもは重症化しやすく、命の危険に晒されることもあります。
とくに、乳児を預かる保育施設では感染症対策において細心の注意を払う必要があるでしょう。
③自分で対策できない
多くの子どもを預かる保育施設では、子どもひとりひとりの体調管理を行い、感染症の疑いがある場合は迅速に対応することが必要です。しかし、それはスタッフのみが感染症対策に携わるのではなく、子どもや保護者も関わっていかなくては、最善の対策とは言えません。周囲の人の協力を得ながら、感染症に対抗していきましょう。
感染症の要因や感染症を拡大させないための予防策、感染症対策の体制づくりをする上で重要なガイドライン等の感染症対策を行う上での基礎知識を解説します。
感染症が発生する要因
感染源
細菌やウイルスなど、感染症の原因となるものを感染源と言います。この感染源が含まれるものの一例は以下のようなものになります。
- 嘔吐物や排泄物
- 血液や体液
- 上記に触れた手や指
感染経路
感染経路とは、上記した感染源がどのように伝わり、広がったかの経路です。この感染経路を把握し、経路ごとの感染症対策を行うことが予防に繋がります。
感受性
感受性とは、感染症に対しての免疫が弱く、感染した際に発症することを言います。乳幼児は免疫が少なく、感受性が強いのが特徴的です。そのため、ワクチンや予防接種により、免疫力を高めるのが有効な手段でしょう。
感染症へのアプローチ
感染源を持ち込まない、増やさない
感染者は感染源を排出しているため、症状が出た際にはベビーベッドにて休ませたり、症状が治まるまで登園を控えてもらったり等の対策が必要です。そうすることで、集団感染のリスクを軽減し、安全な保育を実現しましょう。
またこのような適切な対策を実現するには、感染症の潜伏期間や感染経路等、感染症についての知識は必須と言えるでしょう。感染症によっては、潜伏期間中から軽症化してからも感染源を排出するものもあります。
子どもが体調不良を訴えた場合や感染症が流行し、少しでも症状が見受けられる場合は、早めに病院を受診してもらい、感染症の疑いがあると分かった時点で保護者様への通達とともに、保育園の利用を控えてもらうことが感染を増やすことのない対策となります。
私の施設は一時預かり専門ということもあり、通常の保育施設よりも長めに登園を控えてもらっています。保護者様はこの意図を理解してくださっているので、特にクレームもありません。
感染経路別の特徴にあわせた対策
- 飛沫感染
咳やくしゃみ、会話から感染してしまいます。代表的な飛沫感染症として、インフルエンザが挙げられ、呼吸器へ影響する感染症が流行する傾向が高いです。日頃から教員や子ども同士との距離が近いことや感受性が高いことが理由でしょう。保護者の協力をもとに、咳エチケットの教育とマスクの着用を促すことが、飛沫感染の予防に繋がります。 - 空気感染
空気感染は室内などの密閉空間で感染しやすい特徴を持っています。空調設備が共通の室内へも感染源は排出されるため、その感染範囲は広いと認識すべきでしょう。空気感染する感染症の中には、麻しん(はしか)のような感染力が非常に強いものもあるので、ワクチン接種による手段が一番の対策になります。また、定期的な換気や発症者の別室隔離も有効です。 - 接触感染
握手や抱っこ、キス等の直接触れ合うことで起こる感染と、感染源を触れた手で触った遊具やドアノブから起こる感染があります。接触感染は、病原体に触れた手で直接口を触ったり、目を触ったりすることから発症します。そのため、手を清潔に保つことが重要視され、丁寧な手洗い指導とともに、必要であれば介助を行うことが大切です。また、嘔吐や下痢等の消毒も迅速かつ適切に行う必要があります。 - 経口感染
水や食事に病原体が含まれ、それが体内に入ることで感染します。経口感染は食材の衛生管理がカギになります。十分な加熱と、手指や調理器具の消毒も徹底して行いましょう。 - 血液媒介感染
傷口から血液(病原体)が浸入し、感染するものです。元気いっぱい遊び回る子どもたちはケガすることが少なくありません。もしも、子どもがケガをした場合、迅速に傷の手当てを行い、他の子どもやスタッフの血に触れないように注意することが重要です。また、手当の際は使い捨て手袋を使用し、少しでも多くの侵入経路を断つことを心がけます。 - 蚊媒介感染
病原体を所有する蚊に刺されると感染症を発症する恐れがあります。代表的なものは日本脳炎ウイルスやデングウイルスでしょう。蚊は水たまりや水田などの水がある場所に産卵し、発生します。そのため、水たまりを作らないよう心がけるとともに、蚊の発生しやすい場所には肌の露出を控えた格好で訪れましょう。
ワクチン・予防接種の実施
ワクチン・予防接種の実施は感染症に対する免疫を与えるので、感受性のある子どもたちの感染症対策に非常に有効です。免疫が全くないまま、入園することは感染症のリスクを高めることになるので、できる限り集団生活を始める前に接種しておくことが重要となります。
そのため、子どもの予防接種の状況把握は必須であり、定期的な予防接種にどのようなものがあるか等の説明を保護者に行い、可能な限りワクチン接種に協力してもらうことも大切です。
もちろん、スタッフの予防接種も怠らず、これまでの予防接種履歴や罹患歴から予防接種が必要だと判断された場合は速やかに対応することが感染症予防に繋がります。
感染症対策における園内での体制づくりも必要です。感染症に対応できる体制を整えることで、万が一園内で感染症が発生しても、スムーズに対応することができます。その体制づくりには感染症対策ガイドラインが参考になります。
保育所における感染症対策ガイドライン
感染症情報の共有
感染症情報として厚生労働省「感染症発生動向調査について」(※1)や国立感染研究所(※2)等の関連機関の情報をいち早く確認することが感染症対策に求められます。これらの情報からは、拡大予防に有効な取り組みが公表されており、有用な公開情報を適切に収集すること。そして職員たちがその情報を共有することで適確な感染症対策を行うことが重要となります。
職員の感染症に関する研修・教育
感染症対策は子どもたちの健康と命を守るために必要不可欠です。しかし、それには子どもたちを身近で保育するスタッフたちの専門的な知識と技術がなければいけません。
そのため研修や教育を通して、十分な知識を蓄えることが重要視されます。そして、感染症の流行に敏感に反応し、感染症情報の共有に努めることが予防へと繋がるでしょう。
上記したような感染症情報は多く公開されています。これらを上手に活用して、知識を深めていくのも良いでしょう。
地域との連携
地域の医療や保健機関とスムーズに連携が取れなければ、感染症を予防することはできません。感染症対策として、大人たちも感染予防に取り組みながら、地域全体で子どもたちを見守ることが、健康的で安全な生活に繋がります。
また、地域の医療機関等と感染症に対する保育園での取り組みを共有し、医療従事者からアドバイスを受けることで、より園児たちの健康に配慮した感染症対策を行うことができます。
保育施設の感染症対策では感染症が蔓延しないよう、日頃から手洗い・うがい等の予防行為と保護者や関係機関との情報共有が非常に重要です。そして、感染症の疑いがある子どもがいたら早急に医療機関を受診し、その感染症に対して有効な対策を取らなくてはいけません。
そのため、感染症が流行する以前にガイドラインに沿った保育園の体制づくりを行っておく必要があります。
しかし、このような体制づくりが困難だと思う人も少なくないでしょう。
第一に考えなくてはいけないのは、幼い子どもたちの命です。常日頃から園児たちの健康状態を把握し、必要な知識を身につけることが効果的な感染症対策に繋がるのではないでしょうか。